【中国書道史】抑揚となめらかさが美しい【褚遂良】の書

知識
烏有先生
烏有先生

今回は「初唐しょとう三大家さんたいか」のひとり褚遂良ちょすいりょうについてわかりやすく解説していきます。

さとるくん
さとるくん

「初唐の三大家」は他に欧陽詢おうようじゅん虞世南ぐせいなんがいます。気になる人は下の記事を読んでみてね。

簡単に説明すると欧陽詢おうようじゅんはキリッとした厳しめの文字、虞世南ぐせいなんはふんわりした優しい文字が特徴です。

欧陽詢と虞世南は、今回紹介する褚遂良ちょすいりょうの先輩というか上司のような立場の人です。

生涯

褚遂良ちょすいりょうは唐時代の皇帝、太宗たいそうのもとでお仕事をしました。

初唐の三大家のひとり虞世南が亡くなってから太宗皇帝は「共に書を語る仲間がいなくなった」と悲しんでいましたが、そこで紹介されたのがこの褚遂良でした。

褚遂良は太宗と一緒に「王羲之おうぎしの書」の鑑別かんべつを行なうことになりました。「鑑別」とは本物かニセモノかのジャッジを行うことです。

くうちゃん
くうちゃん

おうぎしって?

烏有先生
烏有先生

初唐から300年ほど前の書道家です。書道界にとってはとても重要な人物です。また別の回で勉強しますので、ぜひ名前だけでも覚えておいてください。

そんな王羲之おうぎしの書の鑑別で実力を発揮し、太宗も信頼していたようです。

太宗が亡くなる時、遺書により褚遂良を次の皇帝の中書令ちゅうしょれい(秘書長や執事長のようなポジション)にと指名していました。

次の皇帝の中書令となった褚遂良でしたが晩年、皇帝の考えに反対したことで左遷させんされてしまいます。

くうちゃん
くうちゃん

サセンって何ですか?殺されたんですか?

烏有先生
烏有先生

左遷は田舎にぶっ飛ばされることです。「余計なことせず、田舎で地味に暮らしとけ」って感じですね。知り合いもいないし、かなり寂しいと思いますよ。

そして、左遷先で63歳の時に亡くなっています。

書においては、先ほどの王羲之の書を勉強しています。また、上司である欧陽詢・虞世南の文字も勉強し、二人の文字のいいところをうまく取り入れて独自の書のスタイルを作り上げています。

代表作

「がんとうしょうぎょうじょ」と読みます。

中国の西安市せいあんしというところに「大雁塔だいがんとう」という7層の塔があります。その入り口に雁塔聖教序が埋め込まれています。

書かれている内容は、西遊記さいゆうきで有名な三蔵法師さんぞうほうし玄奘三蔵げんじょうさんぞう)が中国からインドに渡って仏教を勉強し、中国で広めたことをたたえ、記念するものです。

くうちゃん
くうちゃん

文字は…なんか線が細いです。

烏有先生
烏有先生

そうですね。これが褚遂良の文字の最大の特徴です。

マミさん
マミさん

特に、長い横画が伸びやかで美しいわ。

さとるくん
さとるくん

細かく見ると、楷書なのに行書チックな筆使いがあります。

烏有先生
烏有先生

さとるくん、鋭いですね!では、ひとつずつ見ていきましょう。

文字の特徴

細い線

褚遂良の最も有名な代表作、雁塔聖教序はぱっと見「細っ!」という印象です。

抑揚のある線

さて、褚遂良の字は細いと言いましたが、ただ細いだけではありません。しっかりと線に抑揚よくようがついています。

「興」の長い横画に注目してください。

線の真ん中は途切れてしまうほどに細いのに、始筆しひつ(線の始まり)と終筆しゅうひつ(線の終わり)はしっかり太く書かれています。

また、右側の文字は「所」という時の昔の形です。長い横画がフラフラと震えているように見えませんか?でも、ただ、フラフラしているだけでなく線の芯はしっかりまっすぐ通っています。

マミさん
マミさん

逆に「芯が通ってない」線ってどんな線ですか?

烏有先生
烏有先生

芯の通った線は、針金が真ん中にすっと通るイメージです。芯の通ってない線は、針金がぐにゃぐにゃです。

マミさん
マミさん

確かに右側の線は、弱く見えてしまうわ。

このように、芯は通っていながらも、筆のふわっとした特性を活かした強さと柔らかさのある書き振りになっていますね。

くうちゃん
くうちゃん

これが、ヨクヨウですか?

抑揚とは、声や感情、音楽の上がり下がりのことを言います。

烏有先生
烏有先生

太い線や細い線があることを考えると、抑揚のある線と言えますね。

また、作品全体を見ても「大」「二」「不」など、画数の少ない文字は太く書かれています。画数が少ないのに、細く書いてしまっては存在感がなくなってしまいます。

烏有先生
烏有先生

一文字一文字の太さにも抑揚をつけて全体のバランスをとっているんですね。

流れるような気脈

もう一つの特徴が気脈きみゃくです。気脈とは「次の画へ行きたい!」という気持ちのことです。筆脈ひつみゃくと言われることもあります。

烏有先生
烏有先生

さとるくんが行書チックに見える部分があると言っていましたね。どこですか?

さとるくん
さとるくん

印をつけたこの部分です。

「在」は1画目と2画目があ繋がって行書の書き方になっています。

「聞」は1画目の最後がはねのような形になっています。

烏有先生
烏有先生

「次の画へ行きたい!」という気持ち(気脈)が現れたものです。

雁塔聖教序は楷書ですが、気脈が現れることで、行書に近いなめらかな楷書になっています。

文字から受ける印象

褚遂良の文字は、細い線の中にも太細の変化があり、行書のような気脈の現れもあります。

烏有先生
烏有先生

抑揚となめらかさが美しいと思いませんか?

また、このような特徴がある褚遂良の楷書は「褚法ちょほう」と呼ばれます。

マミさん
マミさん

技法の名称になっているのね。すごいわ!

さとるくん
さとるくん

抑揚や気脈の流れをたどって見ていると、まるで褚遂良の息づかいも感じられるみたいです。不思議だな。

くうちゃん
くうちゃん

ぼくも、褚法を勉強して、なめらかな楷書を目指すぞ!

烏有先生
烏有先生

今日の授業はここまでです。みなさん、お疲れさまでした!

まとめ

褚遂良ちょすいりょう

  • 初唐しょとう三大家さんたいか」のひとり
  • 代表作:「雁塔聖教序がんとうしょうぎょうじょ
  • 特徴:細い線、抑揚よくようのある線、行書のような気脈きみゃくの通った文字
  • キーワード:褚法ちょほう
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